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燃料電池の触媒層に代表されるような、カーボン粒子の凝集体からなる構造について調査した。
国内でもいくつも論文が発表されている。



Understanding formation mechanism of heterogeneous porous structure of catalyst layer in polymer electrolyte fuel cell(2016)

京大河瀬先生の研究室の井上先生の論文(現在は九州大学の准教授のようだ)。非常に面白い。

MPLは、直径20-50nmのカーボンブラック粒子の一次凝集体(20程度の粒子)で構成され、アグリゲートのサイズは100nm-300nmとされている。CLとMPLは同じカーボンブラックを使用していても、細孔構造が異なる事が分かっている。また、溶媒の状態に大きく依存する。
この違いは、粒子間相互作用(斥力)の違いであり、当然だが通常の粒子充填シミュレーションではこの構造の違いは見ることができない(DLVO理論なるもので簡易的な計算ができるらしい)。

粒子径200nmに比べて、45nmのカーボン構造では反発ポテンシャルエネルギーが負であり、粒子の凝集が容易(分散性が低い構造になりがち)であることを示唆している。

触媒層での適度な量のアイオノマーは、カーボン粒子が凝集する事を防ぐ役割がある(アイオノマを増やし過ぎると凝集してしまうようだが)。I/C=0→I/C=1で、平均径が10μm以上→0.5μm程度まで孔サイズが小さくなる。つまりカーボンブラックが十分に分散している。

不均一な細孔構造の出来上がるプロセスはmigrationと呼ばれるプロセスで説明でき、大粒子は均一に積み重なる一方で小規模粒子が蒸発界面に移動する。この現象は非常に複雑(蒸発速度が最も支配的とあるが)で、Pe数というパラメータで整理できるらしい。

論文ではカーボン構造を作成し、表面にアイオノマをコーティングした際、コート条件によって細孔構造とガス拡散性能がどう変化するかをシミュレーションで評価している。




Effect of porous structure of catalyst layer on effective oxygen diffusion coefficient in polymer electrolyte fuel cell(2016)
計算モデルの概要は別の論文にまとめられていた。

数十nmのCB particleがAggregateいなり、それらがファンデルワールス力でAgglomerateになる。
A-Dの4つのタイプのアグリゲートモデルを作成し、その構成をD/L(構造の球相当直径(表面積から算出できる)と最大長さ)で表現している。モデル化についての情報は下記の通り。
・空間分解能3nm
・一次粒子は完全な球体で45nm、CB内の多孔質は無視する
・アグリゲートは粒子数25、粒子オーバーラップ幅は~9nm
・アグリゲートの接続は反発力から粒子間距離を決定し、方向は乱数
・確率密度のパラメータkを0.5~5.0で変化させると異なる凝集構造ができあがる
・利用したアグリゲートは、D/Lが0.5の構造とした。
 別文献のTEM観察で得られた市販カーボンブラックの測定値を根拠としている。
・アグリゲートをパッキングした構造ドメインは1μm3

本題とはそれるが、Fig1にはPorosityとRelative Diffusion Coefficientの関係がまとめられている。
MPLは空隙率0.6-0.75程度で、触媒層はそれより小さい。

【所感】
カーボン構造のモデル化が具体的に説明されていた。
どこまで精緻な条件でアグリゲート構造を再現していく必要があるか、実際のモノとの比較でどの程度信頼できるモデルなのか。気になる事は多いが、非常に親切な論文で勉強になった。