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Direct Simulations of Pore-Scale Water Transport through Diffusion Media

米アルゴンヌ国立研究所の論文です。米エネルギー省(DOE)傘下で、かつてマンハッタン計画の一部を担った冶金研究所の系譜を歩んでいる研究所。現在はFC関係の研究も行われおり、論文も出ているので読んでみたいと思います。


この論文をざっくり言うと、液水の流れをより正しく気軽に解くために、計算負荷の小さいMorphology計算にポアズイユ流れにしたがって粘性力を加えた水輸送モデルを用いて、様々なガス拡散層に対して計算してみたよ、というもの、

PEMFCのガス拡散層(GDL)は、PTFE(撥水材)で処理された炭素繊維ペーパの表面に、MPL(PTFEをバインダーとしたカーボン)をコーティングしたもので構成される。
カソードのMPLが性能に寄与するのは、膜の湿潤(back-diffusion of water to anode)に寄与しながらも、GDL内に水が凝集しないようにする効果もあるとされる。

MPL内の液水輸送を正確に解けるのはLBM(格子ボルツマン法)のみ。
よく使われる細孔径分布とヤング・ラプラス方程式に依存したMorphology(形態)計算による侵入浸透アルゴリズムは、質量と運動量の保存を無視しているので、液水の輸送ダイナミクスを再現しているとは言いにくい。

この研究では、Morphology計算に加えて、ポアズイユ流れにしたがって粘性力が計算される水輸送モデルを用いて、排水プロセスを実験と比較し空間分布がよく近似されていることを確認している。
開発した手法を用いて、MPLのクラックあり/なしによる液水輸送経路を可視化・比較し、排水に必要な津力が428kPa(亀裂なし)→32kPa(亀裂あり)と変化することを確認した。

MPLあり/なしのサンプルで、液水の可視化、ランドの影響(セパレータと膜の接触部に水が溜まる)、ガス拡散の影響を可視化。ガス拡散では、ドライでの拡散は"MPLなし>MPLあり"に対して、ウェットでは"MPLなし<MPLあり"と逆転する結果が得られている(Fig9(a))。


【所感】
クラックのあるMPLに連続的に水を流すと、時間に対して圧力の変化はなく、クラックがないと徐々に400kPaまで増加して定常になることがFig5(a)からわかる。saturationは低いまま保たれるので、ガスの流路は埋まる事がなく、特に液水量の多い稼働条件においてフラッディングを抑えられると考える。

Fig9(a)の結果も興味深く、ドライ条件でMPLは不要で、wetで排水性を高めることができる、というのを表している。評価指標が拡散係数でなくε/τ(空隙/屈曲度)であるのも興味深い。


Referencesで気になった文献

■Tomographic Imaging of Water Injection and Withdrawal in PEMFC Gas Diffusion Layers



■Modeling of Two-Phase Behavior in the Gas Diffusion Medium of PEFCs via Full Morphology Approach
https://iopscience.iop.org/article/10.1149/1.2472547

→Fraunhofer Institute for Industrial Mathematicsが2007年に出した論文で、アンドレアスも名前が入っているので、おそらくGeo〇ictのMorphology計算の原著と思われる。